甘辛問答無味感想vol.18 | 旅するように和菓子と出逢う(旅わが)

敬老の日。君たちは何を贈るのか?

甘辛問答無味感想vol.182023.09.08

甘辛問答無味感想vol.18

すぐれた映画監督は食べるシーンが上手い。


これはアニメを含む映像演出における定説です。


宮崎駿さんの最新作でも

そこはきっちり描かれていました。


ご覧になりましたか?


宮崎さんの作品では

いつも食事のシーンが印象的ですが、


最新作「君たちはどう生きるか」でも、


戦争中ながらも食へのこだわりを見せる

老婆たちの姿が作品を活気づけています。


「君たちはどう生きるか」というタイトルなので、


何か壮大なテーマの物語のように

思えるかもしれませんが、


私のような高齢者から見ると、


ストレートに

「生きることとは食べることではないのか?」と


問いかけられているように感じました。


この作品は、宮崎さん75歳で

企画スタートして82歳で完成した、


宮崎さん最後の作品と言われていますが、


90歳を越えても、

映画を監督して主演する人がいる時代なので、


まだまだやれそうな気がします。




さて、9月には敬老の日があります。


この祝日が制定された

1966年に65歳を越えている人、


つまり高齢者はどのくらいいたのかと言うと、


その割合は人口のわずか7%だったそうです。


それが今では30%近くもいてさらに増加中なので


そろそろ高齢者の区切りを

変える時なのかもしれませんね。




敬老の日は中国にもあって、

日本よりもずっと大昔から続いています。


旧暦の9月9日がその日です。


これは重陽(ちょうよう)の節句の日にあたります。


中国では奇数の単数、

つまり1,3,5,7,9を

縁起のよい陽数としていますが、


その最大数である9が

二つ重なる(つまり重陽)ので、


この日を最高の日と考えて

高齢者を敬う日にしているというわけです。


老人を大切にする中国ならではの習慣ですね。




さて、現役感バリバリの高齢者時代に、

敬老の日のプレゼントは何がよいのか?


これは迷うところでしょう。


高齢者に対するアンケートによれば、

旅行や花が人気のようですが、


ここはやはり和菓子をぜひ

選択肢に入れてほしいところです。


健康上、甘いものは高齢者には

よろしくないという声もあるようですが、


和菓子の材料は基本的に健康的なものばかりです。


中でも小豆には

ポリフェノールが多く含まれているので、


高齢者にはむしろおすすめですね。


甘いものが苦手な方にはお赤飯がおすすめです。


小豆の赤い色は邪気を払うとされているので、

お祝いの席に欠かせません。


お赤飯が和菓子なの?と

思われるかもしれませんが、


昔、お赤飯はお菓子に分類されていたそうです。




季節感を重視するなら、

重陽の節句に重なるので、

着せ綿(きせわた)はいかがでしょう。


着せ綿は、

菊の花に綿を被せて香りを写し取り、


その綿で体を拭き清めると老いが去ると

言われる縁起の良い習慣です。


今はそのような習慣はありませんが、

和菓子でそのイメージを再現しています。


いずれにしろ、

和菓子は食べておいしいだけでなく、


見た目も美しかったり可愛かったり、

歴史的であったりして、

趣味のいい高齢者にきっと喜ばれるでしょう。




ひとつ言えることは、

宮崎駿さんも描いているように、


高齢者は食へのこだわりが強いということです。


長い人生の中で食に関する体験が豊富だし、


和菓子の産地や歴史に対する知見も高いです。


なので、贈り物は知名度や値段で選ぶよりも、


食べながら話がはずみ、


思い出がよみがえるようなものが

よいのではないかと思います。




おいしいものは人を元気にします。


すぐれたクリエイターが

食べる場面を大切にするように、


君たちは何を選ぶのかと、


私は、若者に問いたいのであります。

甘辛問答無味感想とは

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