美味しいものには棘がある。

美味しいものには棘がある。

甘辛問答無味感想 vol.92022.10.03

甘辛問答無味感想 vol.9

なぜ、栗はとげとげのイガに包まれているのでしょう?

同じブナ科でも、ドングリには

棘がないのに。



「それは動物に食べられないためでしょう」

というのがありそうな答えですが、



栗は熟してきたらイガが割れて、

実が取り出しやすくなります。



だから、食べられないためという理由だけでは、



説明になっていないと思いませんか?



そこで科学的根拠もなく考えたのがこんな理由です。

チコちゃん風にいうとこんな感じ。





「美味しくなるまで待ってもらうため!」



実を言うと正確な理由は植物学者でも分からないそうです。

でも、こんな風に擬人化したくなるくらい、



秋の栗は美味しいと思いませんか?



栗を使ったお菓子がどれもすごく美味しいのは、



この食べ頃サインが利いているからではないかと、



思うんですけどね。





さて、名作ぞろいの栗のお菓子の中でも究極と言えるのは、



栗だけで作った栗きんとんではないでしょうか?



栗を茹で、硬い皮を一粒ずつむいて中身を取り出します。



渋皮をむくのがこれまた面倒なのですが、



渋皮が混じると味が落ちるので、丁寧に取り除きます。



栗は小さいので、この作業を延々根気強く繰り返します。



むいた栗は潰して、砂糖を加えて煉って絞って、



そうして、ようやく純粋栗きんとんのできあがりです。





「何も足さない、何も引かない」



これは高級ウイスキーの名作コピーですが、まさしくその境地ですね。



無闇に味を加えたり、飾ったりするのではなく、



栗の中に元からある美味しさのエッセンスを、ギリギリまで引き出してくる。



これこそ、日本的な感性であり技ですね。





小さな栗にここまでこだわるのは、



栗と日本人の歴史を知ると納得です。



というのは、縄文時代の遺跡から、



栗をとんでもなくたくさん食べた跡が発見されているからです。



縄文時代って言ったら1万年以上前ですよ。



甘いものが少ない時代なので、



栗は天然のスイーツとして大人気だったのかもしれません。



むかし、栗にはイガのない品種もあったそうですが、



その後、栽培されるようになってから、イガ付きの栗が主流になったようです。



たぶん、イガ付きの方が美味しかったからでしょう。



やっぱり「美味しくなるまで待って」説が信憑性を増してきますね。



人を寄せ付けない外見なのに、中身は味わい深い。



栗ってツンデレなんですね。





本格的な栗きんとんはどうしてもお値段がお高くなります。



そこで、サツマイモを使った庶民派のきんとんが登場するわけですが、



秋冬のサツマイモがこれまた美味しいから、これはこれでOK。



いやあ、秋ってほんとにいいですね。



季節の美味しさを求めて、



時刻表片手に旅に出かけてみたくなりました。



栗饅頭が大好きだったという松本清張さんのミステリーでも読みながら。

甘辛問答無味感想とは