甘辛問答無味感想 vol.7 | 旅するように和菓子と出逢う(旅わが)

21世紀の夏バテ対策はあんころ餅で決まり

甘辛問答無味感想 vol.72022.08.01

甘辛問答無味感想 vol.7
土用の丑の日の頃、


関西でお菓子屋さんの前を通りかかると、


「土用餅」の貼り紙が目につきます。


夏バテ防止に食するものとしては、


今どきは圧倒的にうなぎですよね。


でも、天然うなぎの旬は冬なんです。


それなのに、夏はうなぎ、となったのは、


かのエレキテルおじさんこと平賀源内さんの


発案だったとか。


真偽のほどは不明ですが、


これはよく知られたお話では。


ご存じない方のために、


そのいきさつを簡単に記すと‥。






江戸時代、夏のうなぎは不人気でした。


旬が冬なのだから当然でしょう。


それでも「夏にうなぎを売りたい」。


うなぎ屋さんの切実な想いを


受け止めた源内さん、


こんな宣伝文を書きました。


「土用の丑の日うなぎの日。


食すれば夏負けすることなし」。


簡にして要を得た名コピー。


これが江戸時代の消費者のハートに


突き刺さりました。


以来、日本の夏はうなぎの夏になった


という訳です。






おっと、土用餅の話でした。


土用餅とは、お餅をあんこでくるんだ、


あんころ餅のことです。


小豆は栄養が豊富です。


低脂肪、高たんぱくで、


ビタミン、ミネラルを多く含み、


食物繊維はごぼうよりも多く、


ポリフェノールはワインよりも多いという


優等生です。


昔から夏バテ防止に食べられていたのも


納得です。


これがあんころ餅になることで、


甘くておいしい、だけではなく、


お餅は力持ちに、小豆の赤さが厄除けに


通じるという語呂合わせも加わって、


あんころ餅は土用の季節のお菓子として


定着したようです。






夏バテというと、うなぎや焼き肉などの


ガッツリ系ばかり頭に浮かびますが、


江戸時代には、夏バテの症状別に


いろいろなものが食べられていました。


熱中症対策にはからだを冷やす瓜類、


食中毒対策には梅干、


食欲不振にはうどんと言った具合に


「う」の付くものがよいと


されていたようです。


このライミング感覚、当時の広告屋さんの、


どや顔が浮かびません?


む?もしやこれも源内さん?






小豆は、栄養豊富かつバランスがよいことに


加えて、美肌効果やアンチエイジング効果も


あるそうです。


ならば、男子も美容をするなりの時代、


栄養バランスと美しさが両立する


あんころ餅こそが、


うなぎに代わって、21世紀の真夏の定番に


なるべきなのではないのか。


和菓子派の私としては、


そう強く主張したい。






「土用の丑の日あんころ餅、食すれば、


美しさでも負けることなし」


源内さんなら、これをどんなコピーに


してくれるだろう?
甘辛問答無味感想とは