甘辛問答無味感想 vol.2 | 旅するように和菓子と出逢う(旅わが)

ドラえもんのどら焼き

甘辛問答無味感想 vol.22022.01.27

甘辛問答無味感想  vol.2
ドラえもんはどら焼きが大好き。


名前が似ているからかな?






それぞれの語源を調べてみました。


ドラえもんは、猫型ロボットということで


「どら猫」から来ているそうです。


どら猫?


サザエさんの主題歌で


お魚くわえて逃げる猫、あれがどら猫。


悪さをする猫をどら猫と呼ぶのです。


どら猫の「どら」はどら息子から来ています。


どら息子とは働かずにぐうたらしている


男子のことで、「金が尽きる」が「鐘を突く」


になり、鐘が銅鑼(どら)に変化したらしい。


銅鑼とはシンバルみたいに丸くて大きな


金属製の打楽器ですね。






どら焼の語源も銅鑼という説が有力なので、


ドラえもんもどら焼きも、


元をたどれば一緒ということになる。


国民的キャラのドラえもんと


庶民的などら焼き。


イメージも名前の語源も


うまく重なっていました。


組合せとしてピッタリじゃないですか。






ドラえもんの姿をよく見ると、


顔も体も手も足もすべて


丸だけで構成されています。


どら焼きも丸が基本。


私たちはまあ~るい形に


やすらぎを感じるから、


姿かたちも永く愛される


秘密なのでしょう。


しかし、どら焼きの魅力は


形だけじゃない。


和菓子の本にこんな記述があります。


「(どら焼きの皮)のふくらみは具(材料)の


わずかな配合の違いや加熱温度によって


異なってきますし、中にはさむ餡(あん)の


練り方や水分量、糖度などによっても


驚くほどの違いが表れます」。※


これは和菓子の豊かな個性を語るところで、


どら焼きを一例として取り上げた部分です。


どら焼きはみんな同じように見えるけど、


中身につくる人の個性が表れるらしい。


やっぱりね。







テレビで「あん」という映画を見ました。


樹木希林さんの遺作で、


どら焼きの餡(あん)を


つくり続けてきた女性を演じている。


映画の中で餡をつくるプロセスを


やさしく語る場面があって、


釜の中の小豆の声に耳を傾けながら


餡を炊き上げる、と彼女は言う。


ここにもどら焼きの意外な繊細さが


表れています。






たかがどら焼きと言うなかれ。


ドラえもんの4次元ポケットのように、


どら焼きは和菓子のふところの深さを


教えてくれる。




※「和菓子と日本茶」(和食文化国民会議監修)から編集して抜粋。
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