甘辛問答無味感想vol15

5月がずっと続けばいいのに

甘辛問答無味感想vol.152023.04.07

甘辛問答無味感想vol.15

5月には母の日があります。


5月は一年中でいちばん美しく楽しい季節。


花が咲き乱れ、旬の食材も豊富です。


街を行く人の服装も軽く華やかです。


母の日が5月なのは、


誰もが抱く理想的な母のイメージに

ぴったりだから、でしょうか?


梅雨のジメジメした第三日曜日の父の日とは、

うーん大違い。






日本は四季の変化が大きくて

猛暑と極寒の時があるので、


5月がずっと続けばいいなと思ってしまいます。


でも、1年中が5月だったら、

5月のありがたみは消えてしまうでしょうね。


季節は日々移ろっていくからこそ

美しく楽しく感じるのだと思います。


日本ではこの季節の移ろいが

暮らしの隅々にまで浸透しています。


和菓子だって、

季節の変化を抜きには語れません。


店頭の和菓子を見て、

逆に季節の到来を知ることもあります。


世界的に見てもこれほど四季の変化に

敏感な国はないでしょう。


今は農業技術の発達で

1年中食べられるものが増えて、


便利になったなあと感じることもありますが、


一方で旬の魅力が薄れたような感じがします。


わがままですね。






母親のイメージも

季節の変化と似ているような。


自分が幼かった頃の

若くて元気な母のイメージが


ずっと続けばいいのにと望むのですが、


自分は成長して大人になり、

母はやがて年老いていきます。


気づけば守られる立場から

守る立場に変わっている。


「おふくろの味」と言いますが、


これは既に大人になってしまった人の

郷愁ですね。


そこに戻ることができないから、

より愛おしいものに感じるのでしょう。






映画監督スティーブン・スピルバーグが


76歳にして製作した自伝映画

「フェイブルマンズ」は母の映画でした。


主人公サミーの母親は

いつも元気でおしゃれなアーティスト。


一方の父親は科学者で仕事一筋。

まるで陽春の5月と

梅雨の6月くらいの差があります。


サミーはこのいつも春みたいな母親に

守られるように映画づくりをはじめ、


母を楽しませることによろこびを感じますが、


ある日、母親も一人の

人間であることに気づきます。


主人公サミーが成長したのですね。


しかし、そのことがきっかけで

映画表現の明と暗を知ることになり、


映画の奥深さに魅了されていくのです。


スピルバーグにとって、

映画は母そのものなのかもしれません。






さて、今年も母の日が近づいてきました。


趣向を凝らした和菓子が

たくさん店頭に並びます。


今年もこの季節を楽しめることに

感謝したいですね。


あ、でも、忘れてほしくないのは、


しとしと降る雨にも味わいがあるということ。


その味わいについては、また別の機会に。


移ろいを楽しみましょう。

甘辛問答無味感想とは