茶師十段が提案する、
暮らしのお茶。

京都、金沢と並び「日本三大菓子処」として名高い島根県松江市には、古くからお茶文化が歴史に根付いている。江戸時代後期、松江藩7代藩主の松平治郷(不昧公) が形式を重んじる当時の茶の湯を批判し、本来の「わびの精神」や実用的な美しさを重視する独自の「不昧流」を確立。庶民へと広く普及させたという。現代でも、お茶が暮らしの一部として愛される豊かな文化の土台となっている。

この歴史深い茶町に明治24年(1891年)に創業し、今も変わらず暖簾を掲げているのが「加島茶舗」だ。確かな目利きで全国から質の高いお茶を仕入れ、自由な発想でブレンドしたお茶の提案をしていることが特徴。

それを支えるのは、次期店主であり『茶師十段』の資格をもつ6代目の加島浩介さんである。茶師十段とは、全国茶審査技術競技大会において与えられる、全国でもわずか数十名程度の高い技術で、現在中国四国地方では加島さんだけという。幼い頃からものづくりが好きだった加島さんは「ゆっくりと考えながらお茶に向き合える時間が自分に合っている」と言い、その姿勢には丁寧なお茶づくりを垣間見ることができる。

現代のライフスタイルに合わせて提案した「暮らしのお茶」は、シーンにあわせて苦みや旨みのバランスを追求したお茶シリーズ。これらの商品の誕生でお茶に馴染みがなかった人にも気軽に手に取ってもらえることを実感したという。

そのひとつ「和菓子のための煎茶」は、和菓子の主役である小豆の甘みや重厚感を味わった後の余韻を引き立て、次のひと口がよりおいしくなるお茶を追求。小豆と調和するブレンドをぜひ試してほしい一杯だ。

さらに、カフェインを控えている妊婦さんや高齢の方、カフェインや苦みが苦手な方や子どもまで安心して抹茶の雰囲気を楽しめるという“ノンカフェイン”の抹茶風パウダー「まるで抹茶」は、全国から感謝の声が届くほど反響を呼んでいるのだそう。自由な発想から生まれるお茶は、私たちの今に寄り添った楽しみ方を提案してくれる。

お茶を取り巻く市場や環境の変化で大変なことも多いというが、加島さんはその変化すらも「新しい商品を提案する機会」として、ポジティブに捉えている。「古い業界という印象からもっと自由になり、お茶業界に新しいプレイヤーが増えて挑戦したくなるようなロールモデルになりたい」と語るように、確かな技術とアイデアで、可能性を広げながら「現代のお茶屋」として新しい風を吹き込んでいる。その風を感じながら、とっておきのお菓子とともに、お茶の時間を楽しんでみたくなる。

