和菓子と、俳句。
形や色などのモチーフに素材、名称(菓銘)など
いたるところに季節感がつめこまれた和菓子。
特定の季節を表す『季語』を用いた十七文字の定型詩、俳句。
どちらも、日本の豊かな四季に触れられるもの。
俳句の中にある和菓子、
探してみました!
春、夏、秋、冬、
それぞれの季節の俳句の中に登場する和菓子たちは、
どんな姿をしているのでしょうか。

腹減るとにはあらねども蕨餅
──長谷川零余子
季語・蕨餅
高浜虚子に師事しつつ、
やがて「立体俳句論」を提唱した俳人、長谷川零余子。
『はらへる・と・にはあらねども』、つまり
「お腹が空いたわけではないけれども」、わらび餅。
つるりとさらっと食べやすい
わらび餅の「あるある」を、簡潔に表しています。
夏を連想させる質感とは裏腹に、『蕨餅』は春の季語。
真冬に採れたわらびの根茎を幾度も水洗いし、
アクを抜き、抽出したデンプンを乾燥させ、
やっと出来上がったわらび粉をわらび餅にする季節が、
春だったのです。
技術の進歩により、現代ではいつでも、
わらび餅を食べられるようになりました。
\旅わがで『蕨餅』、みいつけた!/

水の代わりに、牛乳を使用!
『腹減るとにはあらねども』つい手を伸ばしたくなる食感のまま、
牛乳と、フレーバーごとに使い分けられた素材により
進化を遂げた『わらびもち』です。
練乳入りでほのかに甘い『ミルクわらびもち』を
ストロベリーソースで華やかに味わう
「いちごミルク味」。
濃厚なマンゴーの風味を
パッションフルーツ入りソースが盛り上げる
「マンゴープリン味」。
コーヒーを共に練り込んだ『ミルクわらびもち』を
コーヒーフレッシュが包み込む、ニューレトロな
「カフェオレ味」。
気分に合わせて、誰かとシェアして、楽しみ方はさまざまです。

ふるふるミルクわらびもち 3個入(大阪/菓子香房 甘泉堂)

雀一羽二羽煎餅干す青芒の前
──北原白秋
季語・青芒
詩人・歌人・童謡作家として名を馳せた北原白秋の残した句。
青芒とは、穂が実る前の青々としたススキのこと。
青芒の前に煎餅が干してあり、
その前に2羽のスズメがいる様子を描いています。
練り上げた生地を乾燥させ、焼き上げる前の
天日干しされている煎餅。
つがいか親子か、スズメ達にとっては
類を見ないご馳走でしょう。
しかし、鋭く尖った葉を持つ青芒の前では、
手も足も出ず、ただじっと見ることしかできない……。
からっとした夏の空気と
煎餅の香ばしい香りが伝わる、
ユーモアのある俳句です。
スズメも釘付けになりそうな
おいしい香りの煎餅といえば、こちら。
\旅わがで『煎餅』、みいつけた!/

1859年創業、岐阜県大垣市に位置する
「田中屋せんべい総本家」の看板商品
「みそ入大垣せんべい」。
卵を使わないことで生まれる、
「ぱりっ」という食感。
自家製の麹味噌と胡麻の風味による、
まろやかな甘みと程よいしょっぱさ。
素朴な味わいと、
手焼きだからこその美しいツヤは、熟練の職人の賜物!
一口食べれば、虜になる。
シンプルで究極、熱心なファンの多いせんべいです。

みそ入大垣せんべい 5枚入(岐阜/田中屋せんべい総本家)

栗焼けば寝そびれあそぶ末子かな
──水原秋桜子
季語・栗
医師と俳人、ふたつの顔を持ち、
「新興俳句運動」の契機をつくった水原秋桜子。
おやつの時間は、お昼寝の時間。
この方の末の子どもは、
栗の焼いた香りに惹かれて眠る機会を逃してしまい、
そのまま遊んでいます。
ほくほくとした焼き栗の、甘くて香ばしい香り。
秋だけの香りにはしゃぐ子どもの笑顔が目に浮かぶ、
なんともかわいらしい俳句です。
秋の味覚の代名詞である栗。
栄養価が高く、硬く腐りにくい木が
建材としても使いやすいことから、
古くは縄文時代より栽培されてきたといいます。
\旅わがで『栗』、みいつけた!/

黄身しぐれならではの
卵黄と餡をあわせて蒸し上げたやわらかな生地には、
なんとバター入り。
それに包まれた栗あんは、
まさに本物と見紛う『栗』感の強さ!
栗が持つ唯一無二の魅力に惚れ込み、追究し、
引き立てるための和菓子を多数生み出してきた
岩手県岩泉の「中松屋」による名品です。

はぜ栗(岩手/栗菓子処 中松屋)

大寒や羊羹残る皿の底
──芥川龍之介
季語・大寒
文豪として知られていますが、
幼少期から作句をはじめ、打ち込んだという芥川龍之介。
季語は『大寒』。
『羊羹』自体は季語ではありませんが、
羊羹よりも水分が多く、つるりと食べられる「水羊羹」は夏の季語、
秋の味覚を取り入れた「栗羊羹」「柿羊羹」は秋の季語です。
二十四節気で一番寒いとされる『大寒』の日に、
誰かが食べ残した羊羹。
大寒という季節から羊羹、皿の底へと、
ミクロになっていく視点が与える寂寥感。
“皿の底”という言葉にもひんやりとした愁いを感じる、
冬を体現した俳句です。
\旅わがで『羊羹』、みいつけた!/

童謡「だんご3兄弟」のモデルとなった茂助だんご。
「五色羊羹」は、その名の通り
バリエーション豊かな五つの味と食感を味わえます。
王道ながらも小豆の粒をしっかりと楽しめる「小倉」、
本格的な風味に満足すること間違いなしの「抹茶」、
なめらかなチョコレートとオレンジ果肉がマッチする「チョコオレンジ」、
ぷちぷちとした果肉の食感が癖になる「いちじく」、
レモンピールと鮮やかな色合いがうれしい「蜂蜜レモン」。
五つの羊羹にそれぞれ与えられた菓銘、
「花」「開」「蝶」「自」「来」は、
禅の言葉、『花開けば蝶自ずから来たる』
(花が咲くと、自ずと蝶が止まりにくるように、
徳がある者には自然と人が集まってくる)
に由来します。

五色羊羹(東京/茂助だんご)

昔は「一年のうち、この季節にしか食べられなかった」というものも、
現代では、おおよそいつでも食べられるようになりました。
便利になった時代と、
変わらない点を残しながら
毎年異なる姿を見せる四季。
どちらも楽しみながら、
私のため、あるいは誰かのための和菓子を選んでみませんか。
俳句と和菓子のひとくちコラム
昭和に活躍した俳人・中村汀女は、
日本全国の菓子を俳句と言葉で紹介した著書『ふるさとの菓子』にて
島根県松江市・風流堂の銘菓「朝汐」に対し、
『朝汐は私の性にぴったりでした。』と書き残しています。

朝汐 8個入(島根/風流堂)




