甘辛問答無味感想 vol.35 | 旅するように和菓子と出逢う(旅わが)

書を捨てよ、旅にでも出ようか

甘辛問答無味感想 vol.352025.12.23

甘辛問答無味感想 vol.35

未知との遭遇

「文脈棚」というのがあります。

書店や図書館での本の並べ方のひとつです。

普通は、ジャンル別とか作家別とかで

括られていますが、

文脈棚は、テーマやキーワードの

関連性に沿って並んでいます。

なので、普通なら別々に置かれるはずの

本と本が、涼しい顔して並んでいたりします。



たとえば、

「旅するように和菓子と出逢う」をテーマに

文脈棚を作るとしたら、こんな感じです。

・四季の和菓子の写真集

・老舗の和菓子屋さんのエッセイ

・茶の湯の本・歳時記・着物の本

・和のデザインの解説書

・味覚の科学・日本の農耕の歴史

・ローカル線の旅ガイド

あるいは、和菓子が出てくる小説や漫画、

さらに、英語で書かれた和菓子の本が

並んでいるかもしれません。



思いも寄らぬ本と本とのつながりが、

見る人の固定観念に小さな穴を空けて、

「おや?」という

新鮮な発見が生まれたら、成功です。

大切なのは、既知の本を探し出すことよりも、

未知の本との、ふとした「出会い」を

楽しむことにあります。



ファンの異常な愛情

文脈という言葉は、最近他所でもよく耳にします。

本来の意味は、

「文章の中の、意味内容のつながり具合」、

だそうです。

最近の使われ方は、

出来事のつながりの中に、

それを貫く背景とか筋とかを、

読み取ることを指すようです。



わかりにくいので、

プロスポーツ選手に例えてみると、

日々の勝敗の背景にある、

その選手の生き方みたいなものです。

生まれつきの才能に対する日々の努力、

試合における動き方の癖、

チーム内での立ち振る舞い、

プライベートの過ごし方など、

情報としてはバラバラに入ってくる要素も、

一人の人間である以上、

何らかの一貫性があるはずです。

ファンは、そこに物語を見出します。

あるいは勝手に想像して盛り上がるものです。

負けてばかりいるのに、贔屓にしているチームってありません?

ずっとマイナーなのに、今も追っかけているバンドとかありません?

そこに、文脈が存在します。

今風に言うと、推しですかね。

もしそういう趣味嗜好があったとしたら、

あなたは文脈棚が作れます。

因縁(いんねん)と言っても、いいかもしれません。

でも、この文脈の豊かさが、

人生の豊かさなのかもしれないと、最近思います。



気がつけば、いつも迷走中

私は、妻と一緒に個人ライブラリーを運営しています。

二人の本とかレコードとかを、

ただ並べているだけですが、

それでも、いろんな方々が来てくれます。

本棚を見るとその人のレベルがわかる、

なんて言われので、不安になることもありますが、

私は、これが私たちの「文脈」なんだと開き直っています。

個人の本棚なんだから、偏っていて当然ですよね。



その偏りは、このコラムにも表れています。

今まで書いたものを見れば一目瞭然です。

いつも迷走しています。

書いてる本人だって、最後どこに

着地するのかわかりません。

和菓子のキュレーションサイトなのだから、

専門的なことを書ければいいのですが、

ただの和菓子好きだし、

今は味覚にちょっと課題があるので、

味のことは書けません。

全然、向いてないのです。

しかし、和菓子の魅力は美味しさだけじゃない!

という信念もあります。

普通に見えるおはぎだって、

お店ごとの文脈の中に、あるはずです。

老舗のこだわりかもしれないし、

新規開店の新しい挑戦かもしれません。

私が心がけているのは、

どんな出来事にも、物語が読み取れるということ。

そして、書きながら、発見しました。

和菓子には、豊かな物語があることを。

その発見をうまく書けたかどうかは、

ちょっとわかりませんけど。



ロンググッドバイ

さて、私たちの個人ライブラリーを、

今年の8月で、閉鎖しました。

今の場所と運営方法では、

私たちの高齢化に対応できないと考え、

根本から見直すためです。

ライブラリーの本はすべて、

段ボールに詰めて自宅に引き上げました。

しばらく、本は封印します。

新しいライブラリーができるまで、

私たちは、あちこちに出かけて行くことにしました。

旅するようにではなく、旅に行きます。

ということで、この「甘辛問答無味感想」は、

今回までということになります。

ありがとうございました。



それでは、行ってまいります。