この世界から秋と本が消えたなら
甘辛問答無味感想 vol.282024.10.11
10月になりました。
なのに真夏みたいな日が続きます。
このままでは秋が消えてしまいそうだと、
Tシャツ、短パン姿で私は憂えております。
しかし、どんなに暑かろうと、
暦の上では秋です。
当「旅わが」サイトでも
秋の和菓子特集を企画しています。
ご覧になりましたか?
秋の果実をくるんだり、
秋の風物をあしらったり、
秋の色を取り入れたり、
それぞれに趣向を凝らしながら、
どれも飾りすぎることなく、
シンプルな美しさを大切にしているところが、
和菓子らしいなと思います。
さて、秋といえば読書の秋でもあります。
プロフィール欄にさらりと書いてありますが、
私は個人ライブラリーをやっております。
ライブラリーといっても、
本気の読書家からしたら、
その程度でライブラリー?
と馬鹿にされそうな量ですが、
ま、洋服屋でいえば
セレクトショップっていうんですかね、
「選び抜いた本」という建前で
ぬけぬけとやっておるわけです。
それはともかく、秋らしさの消滅以外に
私が憂えていることがもうひとつありまして、
それは、本屋が消えてしまうかも問題です。
本屋が一番多かったのは1990年頃で、
その数は約28,000軒でした。
それがおよそ30年で
約8,200件に減少しています。
ただし、300坪以上の
大型書店は増加しています。
つまり消えている本屋の大半は、
町の本屋さんということです。
理由はおわかりでしょう。
本離れと巨大ネット書店の影響です。
ネット書店が巨大化して本屋が減るので、
ますますネットに頼らざるを得ないという悪循環。
残念ながら、この流れは止められそうにないです。
ところがです、そんな環境の中で
新しい本屋を立ち上げる人たちがいるのです。
私は興味があって、
各地のそんな本屋さんによく行きます。
その方々に共通するのは、
「売れる」本を並べるのではなく、
自分が「売りたい」と思う本を
選んで置いていることです。
ただでさえ本が売れない時代に、
そんなやり方が通用するのか?
誰しもが思う心配ですが、
人気を集めている店があるのです。
超大型書店には本が100万冊以上あるそうです。
対して町の本屋さんは5,000冊くらいです。
圧倒的な差なので、
そんな規模では欲しい本が探せないだろう、
と思われるでしょう。
確かに欲しい本を探すには十分とはいえません。
しかし、不思議なことに、
そこには本との出会いがあるのです。
「本を探せない」のに「本との出会い」はある。
まるでその禅問答みたいですが、
この微妙な違いにこそ、
小さな本屋さんの存在意義があります。
これらの本屋さんの店主は
店でじっとしていません。
情報発信はもちろん、イベントをしたり、
同じ志をもつ書店同士でコラボしたり、
本を出したりと活発に動いています。
さらに特徴的なのは、本の並べ方です。
大型書店はジャンル別、
作家別に並べていますが、
これらの本屋さんは、
テーマや関連性に沿って並べています。
ジャンルやサイズや作家に関係なく、
本から本へと連想ゲームのような
つながりを感じさせる並べ方です。
このつながりが私たちをワクワクさせます。
すると、今まで気に留めていなかった本を
次々と手にとって、ページを開いてしまいます。
ここに出会いが生まれるのです。
本がいくら好きでも、一時に読める本は1冊です。
毎日1冊ずつ読んだとしても、
生涯で読める本は3万冊程度です。
本は年間に6万冊以上出版されています。
100万冊の本が書店にあっても、
全部チェックすることは不可能で、
結局自分の好みや経験にもとづいて
選ぶしかありません。
そう考えると、
店主が選び抜いた5,000冊の方が、
100万冊の本の塊よりも、
自分に合った本に出会いやすいといえます。
情報が過剰になればなるほど、
必要になってくるのが切り捨てる覚悟です。
そういう意味では5,000冊でも
多すぎるかもしれませんね。
セレクト型の本屋さんが人気を集める中で、
「一箱本棚」がこれまた話題です。
これは書店の棚を細かく区切って、
その一区画を本棚として
定額で貸し出すサービスです。
借り手(オーナー)はそこに好きな本を並べて、
本を販売したり貸し出したりできます。
20冊くらいしか並べられませんが、
棚ごとにそのオーナーの個性が表れて、
ここでも本との意外な出会いが生まれます。
こうして、本の冊数を絞り込んでいくと、
最終的にたどりつくのが本を
1冊しか置かない書店でしょう。
なんと、1週間に1冊しか本を売らない
本屋さんが銀座にあります。
その1冊を大切に売り切る究極のセレクトです。
ここまで来ると文字通りの一期一会、
まるで茶道ですね。
本の世界もここまで来たかという感じですが、
ならば、その特別な1冊にふさわしい、
和菓子がありそうな気がしてきます。
本も和菓子も、
こんな風に1冊あるいは1個を大切にして、
長い歴史を生き抜いてきたわけだから、
そんなに簡単に消えたりする訳ないか。

